名古屋大学大学院国際開発研究科 特任助教
オリフィレンコ アラ
2024年4月24日、私は在間恵子教授の訪問に同行する機会を得ました。
最初の訪問先は、水素エネルギーソリューションを含む業務用電気機器およびシステムの製造やエンジニアリングを専門とする明治電機工業株式会社でした。
同社の知立市(愛知県)にあるトヨタ支店で、冬の暖房と夏の冷房を補助するために使用されている「ミニ水素発電プラント」を見学させていただきました。もちろん、同社は顧客に同様のソリューションを提供しています。同社の純水素燃料電池装置は商用化されており、同日に訪問した川崎キングスカイフロント東急REIホテルでも使用されています。
次に、私たちは神奈川県川崎市役所に向かいました。川崎市は、かつては多摩川河川敷と東京湾臨海部に形成されたコンビナートにおける産業公害で悪名高かった場所です。
しかし、川崎市は環境対策を進め、現在ではカーボンニュートラル化を推進するモデル地域として注目されています。川崎市は「かわさきカーボンゼロチャレンジ2050」などの政策を通じて、クリーンエネルギーの供給、カーボン・リサイクル率の向上、地域全体の電力消費の最適化を実現しようとしています。
2015年に川崎市は日本で初めて先駆的な水素戦略を策定し、企業と連携して、国内外の水素サプライチェーンを構築する実証事業等に取り組んできました。
例えば、昭和電工株式会社(現・株式会社レゾナック)を中心とする「使用済プラスチック由来低炭素水素を活用した地域循環型水素地産地消モデル実証事業」は、環境省水素サプライチェーン構築実証事業に採択され、2015年から開始し2021年に完了しました。現在も、臨海部コンビナートの広範なパイプライン・インフラや水素関連企業の集積を活かして、二酸化炭素フリーの水素の需給拡大を目指す様々なプロジェクトが進行中です。
私は、川崎市が近い将来、日本のカーボンニュートラルへの転換のモデル地域になり、その熱意が全国の同様の取り組みに刺激を与えることを期待しています。
最後の訪問先は、「世界初の水素ホテル」である川崎キングスカイフロント東急REIホテルでした。このホテルは、上述の川崎市における地域循環型水素地産地消モデル実証事業に参加したことをきっかけとして、事業終了後も独自に水素利用を継続しています。
ホテルの正面横に、今回の訪問企業である明治電気工業株式会社製の純水素燃料電池装置が設置されています。ホテルでは、使用する電力の2割程度を、この装置によって発電した電力で賄い、残りを主にホテルから排出される生ゴミを活用したバイオマスによる電力を使っています。
川崎キングスカイフロント東急REIホテルは羽田空港(東京都大田区)からも無料のシャトルバスで約10分という近さで、訪問当日も、海外からの宿泊客もたくさんおられました。
ホテルとして快適なことはもちろんですが、世界初水素ホテルというユニークな試みは、カーボンニュートラル転換に重要な役割を果たしていると感じました。